有機認証でも農薬、化学肥料、食品添加物が認められている
化学物質過敏症の患者さんのなかには、軽症から重症まで様々な症状を訴える人達がいます。かなり重症な患者さんの場合、食べ物に含まれる極微量の農薬や食品添加物などの化学物質に反応し、様々な症状を訴える人がいます。
化学物質過敏症の人達のみならず、多くの人は有機JAS法が発足して以来、安心して有機認証マークを頼りにしています。
ところが、化学物質過敏症の人から「有機認証の野菜でも、農薬を使った一般の野菜を食べた時と同じ様な過敏反応が出たことがありました」といわれ、驚いたことがあります。
有機農産物にも化学肥料が認められている
有機認証があっても、農家の人が陰でわからないように農薬を使っていることもあるかもしれないと思い、調べ始めました。
ところが、農水省の「有機農産物の日本農林規格」を調べていくと、唖然とするような内容が書かれていました。
約21種類の化学合成の農薬・化学肥料・土壌改良資材を条件付で認めているのです。
原則的には、一切の農薬や化学肥料を使用せず栽培することとなっていますが、これらを使わなければ著しく生産量が低下する恐れが発生した場合は、農薬や化学肥料の使用を認めているのです。そして、農薬を使用した場合でも、残留濃度を測定する規則はありません。
実際調べてみると、これらの農薬や化学肥料を使って生産されたものがあり、その詳しい内容をある有機認証団体に聞いてみると「生産者に対する守秘義務が法律にあるので、生産者の同意がなければ情報公開はできない」とのことでした。
なかには、これらの農薬や化学肥料を一切使わず有機認証を得ている生産者もあり、その区別は消費者には判断できないのです。
有機加工食品に食品添加物が認められている
また、有機農産物を使用した加工食品には、約60種類の化学合成食品添加物及び天然食品添加物が認められています。
例えば、豆腐に使う凝固剤は天然のにがりでなくても化学合成の塩化マグネシウムや塩化カルシウムを使用してもよいことになっています。
また、ラーメンには天然かんすいを使わなくても、化学合成のかんすいの炭酸ナトリウムや炭酸カリウムの使用を認めています。
こんにゃくには木灰や藁灰の灰汁を使わなくても、化学合成の凝固剤の水酸化カルシウムの使用が認められています。
加工食品の場合は、これらの食品添加物名が表示されていますから判断できますが、なかには食品添加物か食材か紛らわしい名前のものもあります。
フルーツペクチンと書かれていれば果物のようですが、増粘剤としての天然食品添加物です。
有機認証団体の認識と対策
講演などで消費者の人達に有機認証の実態について質問すると「有機認証の農産物は規則としては農薬も化学肥料も一切使ってはいけないことになっている。加工食品は食品添加物を一切使ってはいけないことになっている」と、ほとんどの人が誤解しています。
そして、この実態を知らせると、驚きと共に農水省・製造メーカー・自然食の販売店に対して不信感を抱いてしまいます。
そこで有機認証団体約50件にアンケートを実施しました。そのなかで答えが返ってきたのは約10件でした。「有機認証した農産物のなかで、許可されている農薬や化学肥料も一切使っていない農産物の割合」を尋ねたところ、ほとんどが詳しい実態を把握しておらず、推測の答えしか返ってきませんでした。
また、有機農産物加工食品のなかで、食品添加物を一切使っていない加工食品の割合も同じような結果でした。
マスコミも間違った報道
有機JAS法が施工されて以来、テレビ、新聞、雑誌、書籍などで有機認証のことが取り上げられるようになってきました。
しかし、その説明は「有機農産物は農薬も化学肥料も一定年数以上、一切使っていないもの」と間違った報道をしています。
そこで、そのマスコミに質問してみると、ほとんどの製作担当者が有機JAS法の本当の実態を知りませんでした。よく確かめもしないで報道しているのです。
間違って報道してしまったことは仕方がないとしても、その間違いを訂正することや間違いの実態を報道することは今のところ、行っていないようです。
消費者に正確な情報公開を
有機認証農産物の場合、一切農薬や化学肥料を使ってない場合と使っている場合との区別はもちろん、堆肥の内容までも消費者に情報公開すべきです。
動物性堆肥は家畜の糞尿に抗生物質やホルモン剤が残留している心配があります。また、硝酸態窒素の問題もあります。硝酸態窒素は、ある種のアミノ酸と反応し、ニトロソアミンという発ガン物質が出来ます。
動物性堆肥より植物性堆肥、植物性堆肥より無肥料のほうがより安心できます。
加工食品は原材料とは別に食品添加物の使用を明記し、また、キャリーオーバー(原材料に使われている食品添加物)も表示すべきです。
食の安全性や信頼性が問われている今、有機JASマークを頼りにしている消費者は多いのです。しかし、これでは消費者の信頼を得ることは出来ないでしょう。
今後、行政もマスコミも有機認証団体も消費者のために情報公開を積極的にするでしょうか?消費者が立ちあがり、新しい情報公開制度を作らなければ解決しないかもしれません。
農林物資の規格化及び本質表示の適正化にかんする法律施行令第29条第1号の農林水産大臣が定める化学的に合成された農薬肥料及び土壌改良資材
(平成12年7月14日 農林水産省告示第1005号)
次の1及び2に掲げる農薬、肥料及び土壌改良資材であって、その有効成分が化学的に合成されたものをいう。
1、 農薬
@ 硫黄くん煙剤A硫黄粉剤B硫黄・銅水和剤C液化窒素剤Dカゼイン石灰E忌避剤F水和硫黄剤G生石灰H性フェロモン剤I炭酸水素ナトリウム水溶剤J炭酸水素ナトリウム・銅水和剤K銅水和剤L銅粉剤M二酸化炭素くん蒸剤NパラフィンO誘引剤P硫酸銅及びQワックス水和剤
2、 肥料及び土壌改良資材
@ さらし粉A微量要素の供給を主たる目的とする肥料及びBリン酸アルミニウムカルシウム
施行期間(平成12年7月14日農林水産省告示第1005号前文)
平成13年4月1日から施行する。
有機農産物加工食品に使用許可されている食品添加物 | ||
番号 | 食品添加物 | 基準 |
1 | クエン酸 | pH調整剤として使用するもの又は野菜加工品もしくは果実加工品に使用する場合に限ること |
2 | DL-リンゴ酸 | |
3 | 乳酸 | 野菜加工品に使用する場合に限ること |
4 | L-アスコルビン酸 | |
5 | タンニン | ろ過助剤として使用する場合に限ること |
6 | 硫酸 | pH調整剤として砂糖類の製造における抽出水のpH調整に使用する場合に限ること |
7 | 炭酸ナトリウム | 菓子類、砂糖類、豆類の調整品もしくはめん・パン類に使用する場合に限ること |
8 | 炭酸カリウム | 果実加工品の乾燥に使用する場合又は穀類加工品、豆類の調整品、めん・パン類もしくは菓子類に使用する場合に限ること |
9 | 炭酸カルシウム | |
10 | 炭酸アンモニウム | |
11 | 炭酸マグネシウム | |
12 | 塩化カリウム | 野菜加工品、果実加工品、調味料又はスープに使用する場合に限ること |
13 | 塩化カルシウム | 凝固剤として使用するもの又は食用油脂、野菜加工品、果物加工品もしくは豆類の調整品に使用する場合に限ること |
14 | 塩化マグネシウム | 凝固剤として使用するもの又は豆類の調整品に使用する場合に限ること |
15 | 粗製海水塩化マグネシウム | 凝固剤として使用するもの又は豆類の調整品に使用する場合に限ること |
16 | 水酸化ナトリウム | pH調整剤として砂糖類の加工に使用するもの又は穀類加工品に使用する場合に限ること |
17 | 水酸化カリウム | pH調整剤として砂糖類の加工に使用する場合に限ること |
18 | 水酸化カルシウム | |
19 | DL-酒石酸 | |
20 | L-酒石酸 | |
21 | DL-酒石酸ナトリウム | 菓子類に使用する場合に限ること |
22 | L-酒石酸ナトリウム | 菓子類に使用する場合に限ること |
23 | DL-酒石酸水素カリウム | 穀類加工品又は菓子類に使用する場合に限ること |
24 | L-酒石酸水素カリウム | 穀類加工品又は菓子類に使用する場合に限ること |
25 | リン酸水素カルシウム | 膨張剤として粉類に使用する場合に限ること |
26 | 硫酸カルシウム | 凝固剤として使用するもの又は菓子類、豆類の調整品もしくはパン酵母に使用する場合に限ること |
27 | アルギン酸 | |
28 | アルギン酸ナトリウム | |
29 | カロブビーンガム | |
30 | グアーガム | |
31 | トリアカンソスガム | |
32 | アラビアガム | 食用油脂又は菓子類に使用する場合に限ること |
33 | キサンタンガム | |
34 | カラヤガム | |
35 | カゼイン | |
36 | ゼラチン | |
37 | ペクチン | |
38 | エタノール | |
39 | ミックストコフェノール | |
40 | 酸素処理レシチン | 漂白処理又は有機溶媒処理をせずに得られたものに限ること |
41 | 酵素処理レシチン | 漂白処理又は有機溶媒処理をせずに得られたものに限ること |
42 | 植物レシチン | 漂白処理又は有機溶媒処理をせずに得られたものに限ること |
43 | 卵黄レシチン | 漂白処理又は有機溶媒処理をせずに得られたものに限ること |
44 | タルク | |
45 | ベントナイト | |
46 | カオリン | |
47 | ケイソウ土 | |
48 | パーライト | |
49 | 二酸化珪素 | ゲル又はコロイド溶液として使用する場合に限ること |
50 | 活性炭 | |
51 | ミツロウ | 分離剤として使用する場合に限ること |
52 | カルナウバロウ | 分離剤として使用する場合に限ること |
53 | 香料 | 化学的に合成されたものでないこと |
54 | 窒素 | |
55 | 酸素 | |
56 | 二酸化炭素 | |
57 | その他の食品添加物 | 次の用件を満たすものであること。1、当該食品の製造もしくは掻こう状必要不可欠であること。2、栄養価もしくは品質の安定性を保持すること。3、消費者の判断を誤らせるおそれのないこと。4、天然物質又は天然物質に由来し、化学的に合成された物質を添加していないこと |
有機農産物及び有機農産物加工食品(社団法人 日本農林規格協会)より
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